人手不足を生成AIで補えるか|増員せず生産性を上げる省人化の経営判断

人手不足を、生成AIで埋まる不足と埋まらない不足に切り分けることを示した記事のサムネイル画像

この記事でわかること

  • 人手不足は「業務量超過型」「属人化型」「人手必須型」に分かれ、生成AIが直接効くのは前の2つです
  • 効くのは、入力材料が文字やデータで揃い、出力が下書きでよく、同じ型の作業が繰り返される業務です
  • AIを入れても不足感が消えないときは、使う人の範囲、対象業務、浮いた時間の行き先の順に確認します
  • 浮いた時間を残業の削減・対応件数の増加・採用計画の見送りのどれに充てるかを先に決めないと、経営数値には表れません
  • 期限が迫っている、業務が物理作業中心、そもそも廃止できる業務のいずれかなら、増員・外注・廃止を選びます
目次

人材を募集しても応募が来ない状態が続くと、増員の代わりに生成AIを活用できないか、という検討が始まります。判断が割れるのは、同じ「人手不足」という言葉が、性質のまったく違う状態をまとめて指しているからです。

結論

人手不足の中身は、3つに分かれます。業務量が処理能力を超えている不足、業務が特定の人に張り付いている不足、そして人がその場にいること自体を求められる不足です。生成AIが直接埋められるのは、1つ目と、2つ目のうち手順や判断基準を文字へ書き出せる部分に限られます。移動や搬送のように体を動かす工程、対面での応対、最終責任を伴う判断が占める不足は、AIを入れても人数の問題として残ります。

採用ができない前提で最初に決めるのは、ツールでも研修でもありません。自社の不足がどの型かという切り分けです。埋まる型が主因で、使う人を一部の詳しい社員から広げる手当てと、浮いた時間の振り向け先まで決められる場合に限り、増員より先に生成AIと研修への投資が成立します。人がその場にいることを求められる不足が主因であれば、採用・派遣・外注、あるいは業務そのものの廃止のほうが合理的です。

人手不足の中身を3つに切り分ける

本文の3類型表を図にしたもので、現れ方の違いと生成AIの効き方が段階的に下がる並びを示す
3つの縦パネルで人手不足の型を並べた図。左は全員に書類が積み上がる様子、中央は1人に作業が集中する様子、右は台車を押す人と応対する人

帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2026年4月)」では、正社員の不足を感じている企業が50.6%、非正社員では28.3%でした(有効回答1万538社)。半数が不足を訴えている一方で、その中身は職場ごとに違います。全員が慢性的に残業している職場と、特定の1人が休むと止まる職場とでは、必要な打ち手が入れ替わります。

類型現場での現れ方見分ける質問生成AIの効き方
業務量超過型全員が忙しく残業が常態化。誰か1人が抜けても止まりはしない同じ職種の人が1人増えれば解消するか効きやすい。下書きと整理の工数が落ちる
属人化型対応できる人が限られ、その人の不在で業務が滞る止まる原因を特定の1人に指せるか部分的に効く。知識を文字にできる範囲のみ
人手必須型現場に人が立たないと成立しない。移動・搬送・対面・立会いその時間、人がその場にいないと成立しないか直接は効かない。周辺の記録・報告に限る

判定でつまずくのは、1社の中に複数の型が同居している場合です。経理は業務量超過型、現場管理は人手必須型というように、部門ごとに主因が違うことは珍しくありません。全社でどれか1つに決めようとせず、部門または業務の単位で当てはめます。

属人化型は、書き出せる範囲の広さで効き方が変わります。手順や判断基準を言葉にできるなら、その部分はAIへ渡せます。中身が長年の勘や取引先との関係であれば、渡せる範囲は狭く、AIより先に後任の育成や業務の分解が来ます。

生成AIが効きやすい業務・効きにくい業務

効く3条件と効きにくい業務の線引きを左右に並べ、本文の判別基準を視覚化した
中央の縦線で左右に分けた対比図。左は書類が漏斗に流れる図と下書きへのチェック、循環矢印、右は台車を押す人、向かい合う2人、押印する手

埋まる型に当てはまった部門でも、業務のすべてに効くわけではありません。判別の目安になるのは、次の3条件です。

  1. 入力材料が文字やデータとして手元に揃っていること
  2. 出力は下書きで足り、人が確認してから使う前提になっていること
  3. 同じ型の作業が月に何度も繰り返し発生すること

1つ目を満たさない業務では、AIに渡す前の情報集めに時間がかかり、削減分が相殺されます。2つ目を欠く業務、つまり出力がそのまま社外へ出る、あるいは確定値として扱われる業務では、確認の負荷が増えて差し引きが小さくなります。3つ目は回収の速さを決める条件です。年に数回しか発生しない作業をどれだけ速くしても、部門の人手不足には届きません。

効きにくい側にも線が引けます。体を動かす工程、来客対応や見守りのように人がその場にいること自体が価値になる業務、契約の最終判断や人事評価の決定のように責任を伴う判断は、AIに渡せる範囲が周辺の記録や下書きに限られます。導入後に「思ったほど楽にならない」と感じたなら、対象業務がこの線を越えていなかったかを先に確かめてください。

浮く時間の規模は、外部調査からおおよその見当が付きます。パーソル総合研究所が2026年2月に公表した「生成AIとはたらき方に関する実態調査」では、正規雇用者が生成AIを使った作業単位で、業務時間が平均16.7%削減されていました。一方で、業務時間を削減できたと答えた利用者は4人に1人にとどまります。作業単位で速くなっても、その人の総労働時間まで減るとは限りません。2つの数字の間にあるのは、この落差です。

どの業務から使われているかは、公的統計にも表れています。総務省「令和8年版 情報通信白書」によれば、日本で何らかの業務に生成AIを利用していると回答した企業の割合は86.4%でした。業務類型では「議事録・メール作成補助」が約7割で最も高く、導入効果を実感したとの回答も同様に高い水準でした。入力も出力も文書で完結する業務から、利用が広がっている並びです。

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AIを入れたのに人手不足感が消えないときの切り分け順

本文の診断3ステップを工程として並べ、順序を崩すと手戻りが生じる関係を補う
左から右へ3段階に進む工程図。数人だけ濃い人の輪、作業カードを選別するふるい、3本の配管が伸びる時間の器と、下を逆走する細い矢印

ツールを配り、研修も実施したのに残業が減らないとき、疑う場所は3つあります。順番を入れ替えると、効いていない理由を取り違えます。

  1. 使う人が一部に限られていないか。対象部門の在籍者数に対して、週1回以上使っている人が何人いるかを数えます。数人にとどまっていれば、業務選定を見直しても母数が小さく、部門の残業時間には表れません。この段で先に来るのは、使える人を増やす手当てです。
  2. 対象業務が効く条件から外れていないか。効く3条件に照らし、入力材料が揃っていない業務や、年に数回しか発生しない業務を対象にしていないかを確認します。ここが外れていると、利用者を増やしても削減量は積み上がりません。
  3. 浮いた時間の行き先が決まっているか。1と2に問題がなければ、作業時間そのものは短くなっているはずです。それでも不足感が消えないなら、原因は削減側ではなく、空いた時間の使い道を決めていないことにあります。

この順序を崩すと遠回りになります。利用者が5人しかいない状態で業務選定を作り直しても、改善幅は5人分にとどまります。逆に、全部門へ広げてから対象業務のずれに気づけば、広げた分だけ手戻りが大きくなります。範囲、対象、行き先の順に見るほど、やり直しは少なくなります。

浮いた時間を経営数値に変える再配分

本文の3つの受け皿と経営数値への出方を流れで表し、行き先未定の時間が吸収される様子を添えた
左の時間ブロックから太い流路が伸び、中央の切替点で3経路に分かれる図。下向きに細い漏れの流路が作業カードの山へ吸い込まれている

3番目の原因だけは、現場ではなく経営側にあります。空いた時間の行き先を決めていなければ、その時間は目の前の別の仕事で埋まるからです。パーソル総合研究所は、生成AIで浮いた時間の多くが日常のルーティン業務に吸収され、総労働時間の最適化に至っていない構図をコラムで指摘しています。

作業が速くなることと、会社の数字が動くことは別の出来事です。あいだに挟まっているのが、浮いた時間をどこへ振り向けるかという決定になります。受け皿は3つに整理できます。

受け皿経営数値への出方事前に決めること
残業の削減残業代・人件費の減少対象部門と、月あたり何時間減らすか
対応件数の増加受注件数・売上の増加増やす対象(商談数、見積件数、問い合わせ処理数)
採用計画の見送り採用費と人件費の未発生どのポジションの募集を、いつまで見送るか

3つを同時に狙うと、どれも中途半端になります。残業を減らしながら対応件数も増やすという設計は、現場から見れば「今までどおり忙しい」でしかありません。採用できない企業にとって現実的なのは、まず採用計画の見送りか残業の削減のどちらかへ絞り、達成できた分だけ次の受け皿へ回す進め方です。

増員ではなく生成AI+研修を選ぶ条件・選ばない条件

本文の判断軸6つを行に、成立する条件と増員・外注を選ぶ条件を列に配し、期限の行を強調した
左の縦軸に沿って6行2列に並んだ格子図。各行に書類や台車、人型、器、砂時計、循環矢印などの小さな絵記号が左右対で入っている

生成AIと研修への投資が増員より先に来るのは、条件が揃ったときに限られます。判断軸は6つあり、自社がどちら側に立つかで打ち手が入れ替わります。

判断軸生成AI+研修が成立する条件増員・外注・業務廃止を選ぶ条件
不足の主因業務量超過型、または文字にできる属人化型人手必須型が主因
業務の材料文字・データで揃っている現場の物理作業や対人対応が中心
使う人の範囲複数部門・複数名へ広げる手当てができる不足しているのが特定の1〜2名の稼働のみ
時間の受け皿残業削減・件数増・採用見送りのいずれかを決められる受け皿を決められない、または繁忙が季節的で一時的
期限数か月かけて型を作り、定着させる時間がある来月までに人がいないと納期や契約が飛ぶ
業務の存続今後も続ける前提の業務廃止・縮小の余地がある業務

6つのうち期限は、ほかの軸が成立側に揃っていても結論を覆します。生成AIの活用には、業務の型を作り、使う人を広げ、運用に乗せるまでの時間がかかるためです。数週間で人手を確保しなければ事業が止まる場面なら、派遣や外注のほうが確実な打ち手になります。両者は排他ではありません。目先を外注でしのぎながら、並行して型づくりを進める組み合わせも取れます。

業務の存続も、着手前に問い直す価値があります。廃止できる業務を効率化しても、投資に見合う効果は出ません。中小企業庁の2026年版中小企業白書では、労働生産性の向上には付加価値額の増加と労働投入量の最適化の両輪が必要とされ、省力化投資やAI活用・デジタル化に取り組む企業ほど最適化を達成する傾向があると整理されています。効率化の候補を挙げる前にやめられる業務を落としておくと、投資の対象が絞れます。

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使う人を広げる段で、法人AI研修が支援できること

埋まる型が主因だと判断できても、使える人が一部の詳しい社員に限られていれば、削減量は部門の数字まで届きません。総務省「令和7年版 情報通信白書」でも、生成AI導入にあたっての懸念として日本企業で最も多かったのは「効果的な活用方法がわからない」でした。当社の法人AI研修は、この段に手を入れるサービスとして設計しています。

研修は、AIリテラシー・生成AI基礎・生成AI業務プロセス適用・社内ハッカソンという4レベルの体系と、部門別の業務テーマを掛け合わせて個別に設計します。受講前に現在地を確認したうえで開始地点を選ぶため、社内でAIの習熟度に差がある状態からでも始められます。

対象業務のずれには、受講者自身の業務を題材にすることで手を入れます。知識のインプットで終えず、業務フローの設計から成果物の実装までを研修の中で進めます。残るのは資料ではなく、その部門で動くワークフローです。研修後アンケートでは、80%以上の受講者が業務でAIを活用していると回答しています。

浮いた時間の再配分が続くかどうかは、研修だけで決まるものではありません。当社は、成果物が業務で使われ続けているかを確認し、つまずきの解消や他部門への横展開を支援する定着支援を、研修とセットで設計しています。研修形式はオンライン・対面・ハイブリッドに対応し、期間と料金は対象人数・レベル・題材によって設計が変わるため、個別のお見積りとしています。

自社だけで切り分けが進まないときの相談の目安

切り分けは、部門の実態を知る人が同席すれば社内でも進みます。外部の視点を入れたほうが早く結論に届くのは、次のいずれかに当てはまるときです。

  • 3類型のどれが主因かについて、部門ごとに答えが割れ、社内で決着しない状態
  • 効きそうな業務の候補は挙がるが、どれだけ時間が浮くかを誰も見積もれない状態
  • ツールは配ったのに利用者が一部に留まり、その理由を特定できていない状態
  • 浮いた時間の受け皿を、経営として1つに絞りきれていない状態
  • 増員・外注・AI投資のどれを先に置くか、判断材料が揃わないまま検討が止まっている状態

当社では、現状の課題や時間のかかっている業務を伺う初回無料ヒアリングを設けています。この場で切り分けの結果と、研修が必要な範囲かどうかを一緒に整理できます。

無料相談。自社に合う研修の選定条件を整理する。目的・対象部門・到達ゴールを整理し、比較時に確認すべき条件をご提案します。無料で相談する

この記事の監修者

AI研修講師・AI活用コンサルタントの青木徹

AI研修講師 / AI活用コンサルタント

青木 徹

AIを実際の業務成果につなげるための支援を行っています。

立命館大学大学院修了後、日本IBMに入社。製造業・海運業などの企業に対し、業務変革支援やテックリードとしてのシステム開発に携わり、企業のDX戦略を推進。その後、複数のAI・SaaSプロダクトを企画段階から立ち上げ、上場企業を中心に100社以上のAI活用・DXを支援。現在は、法人向けのAI研修や生成AI導入支援、AI顧問などを通じて、AIを実際の業務成果につなげるための支援を行っている。専門領域は、生成AIを活用した業務効率化、企業へのAI導入、AI・SaaSプロダクト開発、DX推進。専門的な内容を分かりやすく伝え、参加者が研修後すぐに実務で活用できる、実践的な研修を大切にしている。